ネフローゼ症候群の特徴的な症状のひとつに、浮腫(むくみ)があります。ここでは、ネフローゼ症候群になるとなぜ浮腫が起きるのか?そのメカニズムについてお伝えしています。
Contents
浮腫(むくみ)のメカニズム
ネフローゼ症候群では大量の尿蛋白がでます。本来、血液中の蛋白質は腎臓の糸球体で濾し出されることはありません。しかし、ネフローゼ症候群になると、腎臓の糸球体にあるスリット膜の構造が壊れることで、血液中の蛋白質が尿と一緒に体外に排出されてしまいます。この蛋白質の中にアルブミンがあり、アルブミンが血管の外に出てしまうことで浮腫(むくみ)が生じます。また、血管内のナトリウムや水分が増えることで浮腫がひどくなります。
小児ネフローゼ症候群の子を持つ父親が微小変化型ネフローゼ症候群についてまとめたアルブミン
血液は細胞成分の血球と液体成分の血漿から成り立っています。血液全体の約45%が細胞成分で約55%が血漿成分です。
- 赤血球:内部にヘモグロビンという蛋白質を多く含み、肺から各組織へ酸素を運びます。
- 白血球:体内に侵入した細菌やウイルスなどの異物を排除する免疫機能を担っています。
- 血小板:傷口ができたときに血液を凝固させて出血を止める止血作用があります。
ネフローゼ症候群で浮腫が起こるときに大きく関係しているのが、血漿中の蛋白質、アルブミンです。アルブミンは肝臓でつくられる蛋白質で、血液中の蛋白質の約60%を占める血液中で最も濃度が高い蛋白質です。
- 血液内の水分保持(血漿膠質浸透圧の維持)
- カルシウムや亜鉛などの微量元素、脂肪酸、ホルモン、酵素などと結合して運搬する
血漿膠質浸透圧が低下する
血液中のアルブミンのはたらきのうち、血液内の水分保持(血漿膠質浸透圧の維持)が浮腫と大きく関係しています。浮腫のメカニズムを理解するために、血管の構造と浸透圧について知る必要があります。
血管の外側には細胞があり、血管と細胞の間には間質という組織液(体液)で満たされている空間があります。血液が運んできた酸素や栄養分は血管から出て、間質を通り細胞に届けられます。また、細胞から出た二酸化炭素や老廃物は、間質を通って血管内に戻ってきます。
血管を通る血液中の蛋白質にはアルブミンが多く含まれています。血管の壁には小さな孔があいていて、水分や酸素などの小さな分子は通ることができますが、アルブミンは大きい分子のため通ることができず、血管内にとどまっています(毛細血管の血管壁には半透膜のはたらきがある)。
ここで、浸透圧の話になります。間質のアルブミン濃度よりも血管内のアルブミン濃度の方が高いため、濃度を同じにしようとして間質から血管内に水分が入ってきます。この力を血漿膠質浸透圧(けっしょうこうしつしんとうあつ)といいます。血漿膠質浸透圧があるため、通常は浮腫が生じることはありません。
しかし、ネフローゼ症候群では、糸球体の毛細血管壁にあるスリット膜の構造が壊れることで、本来は血管壁を通ることのできないアルブミンが通過してしまい、尿と一緒に体外に排出されてしまいます。そのため、血液中のアルブミン濃度が低下して(低タンパク血症、低アルブミン血症)、血管内の水分が間質へと出ていってしまいます。間質は水分が過剰にある状態で、これが浮腫となります。
ネフローゼ症候群|浮腫(むくみ)のメカニズム 浸透圧を理解する静水圧が上昇する
低アルブミ血症で血管内の水分が出ていってしまうため、腎臓に流れ込む血流量が減少します。すると、身体が異常事態だと認識し、レニン-アンジオテンシン-アルドステロンというホルモンの分泌が亢進します。その結果、尿細管でのナトリウムと水の再吸収が促され、循環血漿量が増加して血圧が上がります。
毛細血管壁には水分が通れる孔があいているとお伝えしました。血漿膠質浸透圧が低くなると、静水圧(ここでは循環血漿量が増加して上昇した血圧)で血管内から間質へ水分が出ていってしまい、さらに浮腫がひどくなります。
血漿膠質浸透圧と静水圧のバランスが壊れることで浮腫が起きています。
ネフローゼ症候群|浮腫(むくみ)のメカニズム 水とナトリウムの再吸収まとめ
- ネフローゼ症候群では、血液中のアルブミンが尿と一緒に体外に排出されることで低アルブミン血症となり、血漿膠質浸透圧が低下し、浮腫が生じる。
- 血漿膠質浸透圧の低下によって腎臓への血流量が減少することで、身体は血圧を上げようとする。その結果、静水圧が高まり浮腫がひどくなる。
ちょっと難しい内容となりましたが、以上がネフローゼ症候群での浮腫のメカニズムになります。ネフローゼ症候群の糸球体の構造やアルブミン、浸透圧について勉強しなければなりません。youtubeの動画でもわかりやすく説明しているものがありますので、そちらも参考にしてみてください。