ネフローゼ症候群は以下の二つの基準を満たせば、病気の原因はわからなくても、ネフローゼ症候群と診断されます。
- 大量の蛋白尿
- 血液中の蛋白質濃度の低下(低アルブミン血症)
ネフローゼ症候群を発症したとき、再発したときは、尿と血液の検査をおこないます。ここでは、ネフローゼ症候群に対しておこなう血液検査についてお伝えします。
Contents
血液検査
ネフローゼ症候群の血液検査の目的は以下の五つです。
- 血液中の蛋白質濃度の評価
- 腎機能の評価
- 脱水の程度や電解質(イオン)の評価
- コレステロールや中性脂肪の評価
- 感染症の合併の有無
血液中の蛋白質濃度の評価
血液中の蛋白質濃度の評価で調べるのは三つです。
- 血清の総蛋白(TP:基準値6.0~8.5g/dL)
- 血清アルブミン(Alb:基準値4.0~5.0g/dL)
- 血清ガンマグロブリン(IgG:基準値600~1500mg/dL)
尿蛋白が出ても、血清アルブミンの低下が見られなければ、再発の治療を待つことがあります。自然と尿蛋白が消えてしまうこともあるからです。血液中のアルブミンは、血管内に水分をとどめておくために重要な蛋白質なので、血清アルブミン濃度が2.5g/dL以下で浮腫(むくみ)が確認できることが多いです。
血清ガンマグロブリン(IgG)は免疫グロブリンという蛋白質で、抗体の量を表しています。尿蛋白が多いと低下し感染が起きやすくなります。
腎機能の評価
腎機能の評価の指標として用いられるのは次の二つです。
- 血清尿素窒素(BUN:基準値~20mg/dL)
- 血清クレアチニン(Cr:基準値は年齢により異なる。12歳以下では身長m×0.3mg/dL)
尿素窒素は血液中の老廃物の濃度を表します。蛋白質が分解されるとアンモニアが作られます。アンモニアは身体に有害な物質なので、肝臓で尿素に変換され、腎臓で尿として濾過され体外に排出されます。腎機能が悪いと値が上昇します。
クレアチニンは筋肉にあるクレアチンという物質からつくられる老廃物です。尿素窒素と同様に、腎臓を通って尿として体外に排出されます。血清クレアチニンも腎機能が悪いと値が上昇します。
脱水の程度や電解質(イオン)の評価
脱水の評価にはヘモグロビン(Hb:基準値11~15g/dL)を使います。血液中の赤血球の濃度を表します。
尿蛋白が大量に出ている状態では、血清アルブミンの低下が起こり、浮腫(むくみ)が発生します。体はむくんでいても、血管内では脱水症状が進行している可能性があります。血管内の水分不足は、血圧の低下、血栓症の危険性を増加させます。ヘモグロビンの値が高いと血液が濃く、血管内の水分が足りていない状態と考えられます。ヘモグロビン値が16g/dL以上では、強い脱水のため水分や塩分、アルブミンの点滴が必要となることがあり、入院による治療も考慮しなければなりません。
コレステロールや中性脂肪の評価
尿蛋白が出て血液中のアルブミンが低下すると、身体は「アルブミンをもっとつくれ!」と命令を出します。アルブミンは肝臓でつくられますが、その際にアルブミンと一緒にコレステロールを運搬する蛋白質もつくられてしまいます。そのためネフローゼ症候群では、高コレステロール血症(高脂血症)のリスクがあるので、コレステロールや中性脂肪を測定します。
- 血液中の総コレステロール(T-chol:基準値100~230mg/dL)
- 中性脂肪(TG:基準値20~270mg/dL)
感染症の合併の有無
ネフローゼ症候群の治療にはステロイド薬や免疫抑制薬が用いられます。免疫を担うT細胞やB細胞を抑制する薬ですので、服用中は感染症にかかりやすくなります。そのため、感染症の合併の有無を調べます。
- C反応性蛋白(CPR:基準値0.3mg/dL未満)
- 白血球数(WBC:基準値4,000~10,000/μL)
C反応性蛋白は体内で炎症反応が起きると現れる蛋白質で、肝臓で合成されます。細菌による感染症などで上昇します。
白血球はステロイド薬の影響でその値が上昇することもありますが、問題はありません。単球(マクロファージ)、リンパ球、好中球、好塩基球、好酸球の5種類が免疫を担当する細胞です。感染症などのその数が上昇します。
まとめ
- ネフローゼ症候群を発症したとき、再発したときは、血液の検査をおこなう。
- 血液検査の目的は五つ。血液中の蛋白質濃度の評価、腎機能の評価、脱水の程度や電解質(イオン)の評価、コレステロールや中性脂肪の評価、感染症の合併の有無。
ネフローゼ症候群で病院を受診し血液検査をおこなうと、検査結果をもらいます。そこには、上記の値や他の値も記載されています。
病気の状態を理解するために、検査の意味や基準値を知ることはとても大切です。ここの数値に異常はないかなど、気になること、わからないことがあれば、主治医の先生に聞いて理解を深めてください。