小児ネフローゼ症候群の子を持つ父親が微小変化型ネフローゼ症候群についてまとめた

ネフローゼ症候群は原因によって3つに分類されますが、小児ネフローゼ症候群の約90%に当てはまるのが特発性(原発性)ネフローゼ症候群です。私の長男もこれに該当します。ここでは特発性(原発性)ネフローゼ症候群のうち、微小変化型ネフローゼ症候群についてまとめました。

特発性ネフローゼ症候群の分類

特発性ネフローゼ症候群は腎生検による病理検査から次の3つに分類されます。

  • 微小変化型ネフローゼ症候群(minimal change nephrotic syndrome : MCNS)
  • 巣状分節性糸球体硬化症(そうじょうぶんせつせいしきゅうたいこうかしょう)(focal segmental glomerulosclerosis : FSGS)
  • メサンギウム増殖性腎炎(diffuse mesangial proliferation : DMP)

小児特発性ネフローゼ症候群の約90%は微小変化型ネフローゼ症候群です。さらに微小変化型ネフローゼ症候群の90%以上はステロイド薬に良く反応し、治療開始から4週間以内に尿蛋白が消失するステロイド感受性のネフローゼ症候群です。

腎生検による分類とありますが、ステロイド薬に反応がある場合、小児ではほぼ微小変化型ネフローゼ症候群と考えられるため、基本的に腎生検はおこないません。

微小変化型ネフローゼ症候群でも腎生検をおこなうことがある
治療を開始してからステロイドを減量または中止後に再発(尿蛋白がでる)を2 回以上繰り返すと、ステロイド依存性ネフローゼ症候群となります。ステロイド薬にはさまざまな副作用があるので長期の使用は避けたい薬です。そのため、ステロイド薬の他に免疫抑制薬を使用します。シクロスポリン(ネオーラル・サンディミュン)で治療をする場合、副作用として腎毒性があるため治療開始前と開始後2~3年で腎生検をおこなう必要があります。
小児ネフローゼ症候群の治療薬|【その1】ステロイド薬・免疫抑制薬小児ネフローゼ症候群の治療薬|【その1】ステロイド薬・免疫抑制薬

特発性ネフローゼ症候群の原因

特発性ネフローゼ症候群の原因は明確にはわかっていませんが、免疫を担っているT細胞やB細胞が関与しているのではないかと言われています。その理由は2つあります。

  • 風邪などの感染症にかかると再発しやすいこと(免疫細胞が活性化する)
  • 特発性ネフローゼ症候群の人が腎臓を移植してもネフローゼ症候群が再発することがあること

免疫細胞が腎臓に悪影響を与えていると言えます。腎臓が悪ければ腎移植をすれば治るはずですが、そうではありません。免疫細胞がいる血液はそのままなので腎臓はまた悪影響を受けてしまいます。特発性ネフローゼ症候群は血液や免疫の病気と言えます。腎臓はその被害者なのです。

尿蛋白がでる理由

腎臓は血液をきれいにする臓器です。血液をろ過して老廃物を捨て(尿)、必要なものは再吸収するはたらきがあります。ネフローゼ症候群で尿蛋白がでる理由は、簡単に言えば、このろ過フィルターが壊れてしまうからです。

糸球体のスリット膜

腎臓の老廃物ろ過フィルターが糸球体です。糸球体は毛細血管が糸玉のように丸まっています。糸球体の毛細血管壁は血管内皮細胞、基底膜、糸球体上皮細胞足突起で構成されています。この足突起の間にスリット膜という構造物があり、内皮細胞、基底膜、スリット膜の三層構造が血液のろ過膜として機能しています。

スリット膜は小さな孔を持つ格子状の構造をしています。老廃物は小さい分子のため、この格子構造の孔を通過し尿となります。分子径の大きい赤血球や蛋白質はこの孔を通れず、きれいになった血液が腎臓から出ていきます。特発性ネフローゼ症候群では、このスリット膜の構造が壊れ、本来通過できない蛋白質がでていってしまい、尿蛋白が見られるようになります。スリット膜が壊れる原因はわかっていませんが、前述しました免疫細胞から蛋白尿を引き起こす物質がでているのではないかと言われています。

まとめ

  • 特発性ネフローゼ症候群はさらに3つに分類される。
  • 小児特発性ネフローゼ症候群のほとんどが微小変化型ネフローゼ症候群で、ステロイド薬に反応する。
  • 微小変化型ネフローゼ症候群は腎臓の糸球体にあるスリット膜の構造が壊れるために尿蛋白がでてしまう。
  • スリット膜が壊れる原因はわかっていないが、免疫細胞が関与していると考えられる。

小児特発性ネフローゼ症候群は、腎臓の病気になりますが免疫細胞が関わっているかもしれないようです。自分の体を守るはずの免疫が、体に害を与えているかもしれないとは驚きました。スリット膜が壊れる原因が解明され、ネフローゼ症候群が難病でなくなる日が一日でも早く来ることを願っています。

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