小児ネフローゼ症候群について知るために、まずは腎臓の勉強をしなければなりません。ネフローゼ症候群は腎臓の病気だからです。ここではとても精巧で精密な臓器といわれている腎臓のはたらきについてまとめました。腎臓はおしっこをつくるだけの臓器ではないんです。
Contents
腎臓の機能・はたらき
老廃物を捨てる
腎臓の一番代表的な機能が、血液中の老廃物を捨てて(尿、おしっこ)、血液をきれいにすることです。
私たち人間の身体の細胞の数は約60兆個とも37兆個とも言われています。いずれにせよ、ものすごい数の細胞で構成されているのですが、その細胞たちは常に新しい蛋白質をつくり出し、古くなった不要な老廃物は細胞外の血液中に捨てられます。捨てられた老廃物で汚れた血液をきれいにする、老廃物を尿として身体の外に排出する役目を持っている臓器が腎臓です。
腎臓ってどんな臓器?|小児ネフローゼ症候群の子を持つ父親が調べた血液中の電解質(イオン)の調整
腎臓には、血液中の電解質(ナトリウム、カリウム、カルシウム、リン、マグネシウム、クロール など)の濃度を一定に保つはたらきもあります。これは生命の維持に欠かせない大切な機能です。
- ナトリウム(塩分)が10~20%低下すると、痙攣を起こしたり、意識がなくなったりする
- カリウムが2倍の濃度になると、不整脈が起こり、心停止するリスクが非常に高くなる
- 一方、蛋白質の老廃物である尿素窒素が通常の2倍になっても身体に出る影響はほとんどない
腎臓の糸球体で濾し出された電解質は、尿細管で体内に必要な分だけ再吸収されます。ちょっとの変動でも生命に危険を及ぼすため、とても繊細な調節をおこなっています。
血液中の酸性、アルカリ性の調整
身体では、細胞の活動の中で様々な酸性の物質がつくられています。酸化するのはよくない、抗酸化作用のある食材を食べよう、など聞いたことがあると思いますが、酸には毒性があるため身体の外に捨てなければなりません。
二酸化炭素は肺から捨てられていますが、気体になれない酸は尿として捨てます。
- 吐き気や嘔吐、疲労感が出てくる
- 血液がひどく酸性に傾くと、意識の低下が起こり、最悪の場合、死に至ることもある
体内の水分量の調節
電解質と一緒で、糸球体で一度濾過された水分は、尿細管で必要な分だけ再吸収されます。
夏場に尿が濃くなるのは、水分が汗として出ていってしまうので、なるべく身体の水分を外に出さないように、腎臓が調節してくれているからです。逆に、水分を多く摂ったときは血管内の水分量が多くなるので、体内の水分が過剰であると判断して、尿をたくさん出します。
血管内の水分量は、多くなれば高血圧に、少なければ低血圧やショックになります。このような負担が心臓にかからないよう適切な水分量を調整しているのが腎臓です。
ホルモン産生、その他
腎臓にはホルモンや酵素を出す内分泌機能もあります。
腎臓は、貧血のように血が薄くなっていると酸素の供給が少なくなるため、もっと血をつくるように骨髄の造血幹細胞に命令を出します。腎機能の悪化が進行すると貧血になります。その理由は、腎臓が血をつくるように命令を出せないからです。
レニンは、間接的に血圧を上げ、腎臓に血液を流すようはたらきます。レニンが血液中の蛋白質と反応してアンジオテンシンⅡが生成されると、血管が収縮し血圧が上昇します。腎機能が低下すると高血圧になりやすくなる理由の一つが、レニンの増加によるものです。
まとめ
- 腎臓には、老廃物を捨てる、血液中の電解質、酸性・アルカリ性の調整、体内の水分量の調節、ホルモン産生のはたらきがあり、生命を維持するのにとても大切な機能が備わっている。
小児ネフローゼ症候群では、腎臓の老廃物を捨てる機能に異常がでます。糸球体のスリット膜という構造物が壊れて、本来は捨ててはいけない蛋白質まで尿と一緒に排出してしまうため、大量の尿蛋白がでてしまいます。
医学の発達、過去の患者さんの治療データのおかげで、ネフローゼ症候群を薬で抑えることはできるようになりました。しかし、なぜ、スリット膜が壊れるのか?その原因ははっきりとわかっていません。一日も早く、ネフローゼ症候群の原因が解明され、新しい治療法が確立することを願っています。