以前、小児ネフローゼ症候群の治療薬のステロイド薬、シクロスポリン、シクロホスファミド、ミゾリビンについてまとめましたが、その他の治療薬についてもまとめました。
Contents
その他の免疫抑制薬
シクロスポリン、シクロホスファミド、ミゾリビンの免疫抑制薬を副作用ために使用できない頻回再発型・ステロイド依存性ネフローゼ症候群や難治性の頻回再発型・ステロイド依存性ネフローゼ症候群で使われる治療薬もあります。
リツキシマブ(リツキサン)
免疫細胞のBリンパ球のみを抑制する薬で、点滴で投与します。シクロスポリン、シクロホスファミド、ミゾリビンといった免疫抑制薬を用いても再発を繰り返す重症のステロイド依存性ネフローゼ症候群でもステロイド薬を中止させる効果があります。しかし、Bリンパ球の回復とともに再発する患者も多くいることもわかっています。
リツキシマブの副作用
リツマキシブの副作用は点滴投与開始後24時間以内に発現します。また、白血球の一種の好中球が減少する好中球減少症や無顆粒球症による感染症リスクも高まります。
- 発熱
- 嘔吐
- 悪寒
- 頭痛
- 発疹
- 咳
- 気管れん縮
- 虚脱感
- 好中球減少症
- 無顆粒球症 など
リツキシマブは他の免疫抑制薬にない、命に関わる重大な副作用があることもわかっています。
- 進行性多発性白質脳症
- 間質性肺炎
- 潰瘍性大腸炎
- B型肝炎ウイルス感染の悪化による劇症肝炎 など
ミコフェノール酸モフェチル(セルセプト)
小児では腎移植後の拒絶反応予防に使用されている免疫抑制薬です。ミゾリビンによく似た構造と作用がありますが、ミゾリビンよりやや強力で、シクロスポリンよりはやや劣る薬です。
アメリカなどで難治性を含む頻回再発型・ステロイド依存性ネフローゼ症候群の再発予防に対する有効性が示唆されています。しかし、日本でのネフローゼ症候群への保険適応はまだありません(2011年)。
前述のリツキシマブの投与後に寛解維持療法として継続投与することで、リツキシマブの効果を高めることができます。
ミコフェノール酸モフェチルの副作用
ミコフェノール酸モフェチルの副作用として腹痛や下痢などのお腹の症状がありますが、重症の副作用は少なく、薬の減量で軽快することがおおいため長期間の使用ができます。
- 腹痛
- 下痢
- 骨髄抑制(白血球減少・貧血・血小板減少)
- 感染症(ヘルペス・水痘) など
タクロリウム(プログラフ)
タクロリウムはシクロスポリンと似た薬で腎移植後の免疫抑制薬とて使われています。シクロスポリンと比較して多毛や歯肉腫脹といった美容的副作用が少ないため、アメリカでは頻回再発型・ステロイド依存性ネフローゼに使用されることがあります。
タクロリウムもミコフェノール酸モフェチル同様、日本でのネフローゼ症候群への保険適応はまだありません(2011年)。
タクロリウムの副作用
タクロリウムの副作用として糖尿病の発症に注意しなければなりません。
- 腎障害
- 高カリウム血症
- 耐糖能障害・糖尿病
- 不整脈
- 心不全 など
漢方薬
ステロイド薬に反応があるネフローゼ症候群で、再発予防目的で柴苓湯(さいれいとう)という漢方薬を使用することがあるようですが、その効果ははっきりしていません。
まとめ
- シクロスポリン、シクロホスファミド、ミゾリビンの免疫抑制薬を副作用ために使用できない頻回再発型・ステロイド依存性ネフローゼ症候群や難治性の頻回再発型・ステロイド依存性ネフローゼ症候群で使われる治療薬もある
- 日本ではネフローゼ症候群に保険適応がない薬もある
日本ではネフローゼ症候群に保険適応がない薬もあり、まずはステロイド薬で尿蛋白を抑えてシクロスポリン、シクロホスファミド、ミゾリビンといった免疫抑制薬を試していくことが多いようです。参考までに。
小児ネフローゼ症候群の治療薬|【その1】ステロイド薬・免疫抑制薬