小児ネフローゼ症候群では薬による治療をおこない、尿蛋白がでないようにしていきます。どんな薬を使うのか心配に思う親御さんも多いと思います。ここでは小児特発性ネフローゼ症候群の治療で使われる薬について、医師に教えてもらった情報や自分で調べたことをまとめました。
小児ネフローゼ症候群の治療薬はいくつかありますが、子供の状態を見て医師がどの薬を使うか判断します。それぞれの薬にはメリットもあればデメリットの副作用もあります。
Contents
代表的な治療薬|ステロイド薬
ステロイド薬(プレドニゾロン、プレドニン)
尿蛋白を防ぐのにまず使われるのがステロイド薬です。体内でつくられるステロイドホルモンを薬剤として通常の分泌量より多めに使用します。
原発性ネフローゼ症候群の90%の人はステロイド薬を使用して4週間以内に尿蛋白が消失(寛解)します(ステロイド感受性ネフローゼ症候群)。ステロイド感受性ネフローゼ症候群のほとんどがステロイド薬を使用開始後7~10日間以内に尿蛋白が消失します。ステロイド薬を開始して4週間が経過しても尿蛋白が消失しないとステロイド抵抗性ネフローゼ症候群となり、他の薬が使用されます。
ステロイド薬の副作用
ネフローゼ症候群の治療には欠かせないステロイド薬ですが、その副作用も心配になります。
- 成長障害(低身長)
- 緑内障・白内障
- 高血圧
- 感染症
- 食欲の異常亢進
- 気分の変化(落ち込む、興奮して落ち着かなくなる、など)
- 胃痛
- 肥満
- 高血糖
- 筋肉痛
- 多毛
- 満月用顔貌(ムーンフェイス、顔が丸くなる)
- にきび
- 皮膚線条(肥満によって妊娠線のように皮膚に肉割れの線ができる)
- 骨粗鬆症
- 骨壊死 など
多くの副作用がありますが、そのほとんどがステロイド薬を中止すると症状がなくなります。しかし、ステロイド薬を中止しても残る症状が、白内障、皮膚線条、骨壊死などです。長期間の使用では、白内障、糖尿病、骨粗鬆症、低身長などが挙げられます。
これだけを聞くととても不安になりますが、小児腎臓病の専門医はステロイド薬の使用には慣れている方が多いため、心配な点はいろいろと聞いてみるとよいと思います。
ステロイド薬の副作用|小児ネフローゼ症候群の長男が服用して代表的な治療薬|免疫抑制薬
頻回再発型・ステロイド依存性ネフローゼ症候群では上記のようなステロイド薬の副作用が現れるため免疫抑制薬も使用されます。
シクロスポリン(ネオーラル、サンディミュン)
Tリンパ球の活性を抑制することでネフローゼ症候群に効果を示す薬です。頻回再発型・ステロイド依存性ネフローゼ症候群に非常に有効な薬でほとんどの患者でステロイド薬の減量や中止が可能です。難治性のネフローゼ症候群で最も多く使用されている免疫抑制薬でもあります。
シクロスポリン使用開始後2年間で70~80%の患者に再発予防効果が見られ、約50%は一度も再発しません。ネフローゼ症候群に有効な薬ではありますが、シクロスポリンを中止した後に約2/3以上の患者で再発してしまう点が問題です。また、長期間の使用で薬剤の感受性が低下し再発を繰り返したり、中止後に再度使用した際に効果がなくなっていたりすることがあります。
また、マクロライド系抗生剤(クラリスロマイシン、アジスロマイシンなど)も代謝に影響を与えるので使用を控えてください。薬を処方される場合に注意が必要です。「マクロライド系抗生剤を使わないように言われている」と伝えるようにしましょう。
シクロスポリンの副作用
シクロスポリンの副作用で最も問題になるのが慢性腎毒性で、2年以上の長期使用でそのリスクが高くなります。そのため、シクロスポリンによる治療開始のタイミングと2~3年治療を継続したタイミングで腎生検をおこなう必要があります。
- 慢性腎毒性
- 多毛
- 歯肉腫脹
- 感染症
- 高血圧
- 高血圧による脳症 など
その他、多毛・歯肉腫脹などの美容・外見に関する副作用や感染症・高血圧・高血圧による脳症などの合併リスクもあります。
シクロホスファミド(エンドキサン)
ネフローゼ症候群や慢性腎炎治療に使用されている薬で、大量投与によって抗癌剤としての作用もあります。低年齢(6歳未満)やステロイド依存性ネフローゼ症候群への効果は弱いですが、ステロイド依存性ではない頻回再発型ネフローゼ症候群には有効なことが多く、この場合、開始2年後に約50%の患者で再発が見られません。
シクロホスファミドの副作用
シクロホスファミドの副作用として性腺障害、特に男児の無精子症が挙げられます。思春期中や思春期以後の患者でリスクが高くなりますが、思春期前に使用することで性腺障害の可能性も減少します。また、発がん性の可能性の増加もあることから一生で1回(1クール、累積投与量300mg/㎏以内)しか使用できない薬です。
- 性腺障害
- 発がん性
- 脱毛
- 感染症
- 出血性膀胱炎
- 肝機能障害
- 間質性肺炎
- 抗利尿ホルモン不適合分泌症候群 など
その他、感染症・脱毛・出血性膀胱炎・肝機能障害・間質性肺炎・抗利尿ホルモン不適合分泌症候群などがあります。
ミゾリビン(ブレディニン)
日本で開発された代謝拮抗薬です。副作用として高尿酸血症に注意が必要ですが、その他の副作用が少ないので長期間使用しやすい薬です。再発を完全に予防するというよりは、再発を減らすのが目的という位置づけの薬です。20~30%の患者は再発が完全に抑えられているようです。
まとめ
- 小児特発性ネフローゼ症候群で、まず使われる薬はステロイド薬
- ステロイド薬には多くの副作用があるため長期的な使用は避けるべき
- ステロイド薬に代わる免疫抑制薬も使用する場合がある
小児特発性ネフローゼ症候群では治療のために薬を飲まなければなりません。副作用も心配ですが、尿蛋白が出ないようにするためには仕方のないことです。服用中はお子さんに何か変化が起きていないか注意深く見ていく必要がありますが、過去のたくさんの報告データがあるので、主治医の指示に従って治療を進めていってください。
小児ネフローゼ症候群の治療薬|【その2】リツキシマブ、セルセプト、タクロリウム、漢方薬