小児ネフローゼ症候群での【腎不全】について

小児ネフローゼ症候群の多くはステロイド薬によく反応する微小変化型ネフローゼ症候群に分類されます。再発のリスクもありますが、その都度ステロイド薬で寛解(尿蛋白が3日間連続で出ない状態)することができるので、腎不全になることはほとんどありません。

しかしながら、ネフローゼ症候群は腎臓の病気ですので、腎不全についても調べてみました。

腎不全とは?

腎不全とは腎機能が低下する病態の総称で、以下のように定義・分類されます。

腎不全
  • GFR≦30mL/分
  • あるいは、
  • 血清クレアチニン≧2mg/dL
腎不全は様々な疾患によって起こりえますが、上記の状態くらい腎機能が悪化したした状態とされることが多いです。
GFR(糸球体濾過量、Glomerular Filtration Rate)
両方の腎臓の糸球体から1分間あたりに濾過される原尿の総量のこと。腎機能が落ちてくるとGFRは下がります。
GFRはクレアチニンやイヌリンなどの糸球体で濾過されるが再吸収、分泌されない物質=一度濾過されたら尿に出るまで量が変わらない物質を基準に算出されます。(濾過量=尿中排出量)
健常者のGFRは100mL/分前後が正常値です。

腎不全は急性腎不全と慢性腎不全に大別されます。

急性腎不全
腎機能が数時間~数日で急激に低下するもの。
  • 【腎前性急性腎不全】
  • 脱水、ショックによる体液量欠乏と血圧低下で腎血流量も低下することで起こる(腎臓が干上がった状態)。
  • 【腎性急性腎不全】
  • 腎臓そのものの以上で起こる腎不全。予後が悪く、腎不全が改善されず、慢性腎不全と同様の治療を必要とする場合もある。
  • 【腎後性急性腎不全】
  • 尿路結石や前立腺肥大などの尿路閉鎖によって尿生成が止まるもの。
原因の局所によって上記の3つに分類されます。完治するものもあれば、末期腎不全に至るものもあります。
慢性腎不全
腎機能が数ヶ月~数十年で徐々に低下していく不可逆的疾患。
  • 糖尿病性腎症
  • 腎性糸球体腎炎
  • IgA腎症
  • 巣状分節性糸球体硬化症
  • 膜性腎症
  • 膜性増殖性糸球体腎炎
などが原因で起こり、徐々に末期腎不全に近づいていきます。

腎不全の影響

腎不全に至ると以下のような症状が現れます。

  • 尿量の低下(水分、老廃物を体外に排出できない。浮腫、高血圧)
  • ナトリウム、カリウムなどの電解質バランスが崩れる
  • 酸塩基平衡の異常(体が酸性に傾く、アシドーシス)
  • 内分泌機能が障害される(血圧調整、造血ホルモン、ビタミンD3活性化などに障害が起こる)
  • 末期腎不全に至ると尿毒症(めまい、頭痛、食欲不振、疲労感など)の症状が出現する

腎不全に至ると、ある程度までは薬や食生活の改善で治療できますが、それでも追いつかなくなると、透析療法や腎移植が必要になります。

小児の腎不全

小児の末期腎不全の半分以上が生まれつきの腎臓の病気である先天性腎尿路異常が原因です。ネフローゼ症候群では難治性ネフローゼ症候群の巣状分節性糸球体硬化症や先天性ネフローゼ症候群で見られますが、全体の数%と多くはないです。

まとめ

  • 腎不全とは腎機能が低下する病態の総称である。
  • 腎不全に至ると、薬や食生活の改善での治療が可能だが、透析療法や腎移植が必要になることもある。
  • ネフローゼ症候群による腎不全は全体の数%と多くはない。

はじめにも述べましたが、小児ネフローゼ症候群のほとんどが微小変化型ネフローゼ症候群のため腎不全に至る可能性は低いです。

お子さんがネフローゼ症候群と診断されたら、将来的に腎臓がダメになってしまうのか?と考える親御さんもいると思います。しっかり病気について勉強することで、こういった無用な心配や不安から解放されます。大変なことですが、病気である事実を受け入れ、勉強していきましょう。

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