ネフローゼ症候群|シクロスポリン(ネオーラル)ってどんな薬?副作用・注意点など

ネフローゼ症候群の治療では、まずステロイド薬(プレディニン、プレドニゾロン)が使われます。しかし、ステロイド薬には多くの副作用があるため、長期間に渡って使用することが避けられています。そのため、頻回再発型・ステロイド依存性ネフローゼ症候群や難治性のネフローゼ症候群では、ステロイド薬の代わりに免疫抑制薬が使われます。ここでは、ネフローゼ症候群の治療で使われる免疫抑制薬のうち、シクロスポリン(ネオーラル)についてお伝えしています。

シクロスポリン(CyA・カルシニューリン阻害薬)の概要

シクロスポリン(カルシニューリン阻害薬)はサンデュミンやネオーラルという商品名の薬で、T細胞に作用します。具体的には、シクロフィリンというタンパクと結合し、この複合体がT細胞におけるカルシウム‐カルモジュリン依存性の脱リン酸化酵素のカルシニューリンに結合し、T細胞活性化のシグナル伝達が阻害されます。

簡単に言うと、免疫を担うT細胞に出動連絡が来ないということです。そのため、T細胞の働きが制限されます。微小変化型ネフローゼ症候群ではT細胞やB細胞が腎臓の糸球体に悪影響を与えていると考えられているため、この免疫抑制薬が使われます。

シクロスポリンは血中濃度が低すぎると効果が不十分で、高すぎると副作用がでやすくなりますので、どれくらい体で使われているか調べる必要があります。そのため、定期的に服用2時間後に採血をして有効血中濃度を測定します。その濃度を見て服用量を調整していきます。

シクロスポリンの問題点

シクロスポリンは臓器移植後の拒絶反応を抑えるために使われる薬でもありますが、頻回再発型・ステロイド依存性ネフローゼ症候群にも有効な薬です。ほとんどの患者でステロイド薬を減量、中止することができます。

しかし、問題点も報告されています。

ネフローゼ症候群におけるシクロスポリンの問題点
  • シクロスポリンの服用をやめると再発することがある
  • シクロスポリンが有効であったのにもかかわらず、服用中に薬剤の感受性が低下して再発を繰り返すことがある
  • 有効であったが、シクロスポリンを中止後再度服用し始めたときに効かなくなっていることがある

シクロスポリンの注意点

シクロスポリンは食後よりも食前(食事を摂る15~30分前)に服用したほうが、吸収がいいとされています。また、シクロスポリンを服用している期間は食べてはいけないものがあります。

シクロスポリン服用中に食べてはいけないもの
シクロスポリンの代謝を阻害し血中濃度が上昇してしまうため、以下の食材を食べることは避けてください。(果物の渋皮に血中濃度に影響する成分があるといわれています。)
  • グレープフルーツ
  • スウィーティー
  • ザボン(晩白柚)
  • ブンタン
  • ハッサク
  • 夏みかん
  • 甘夏
  • ジュースも同様に飲まないほうがいいです
その他、セイヨウオトギリソウ(セントジョーンズワート)はシクロスポリン効果を弱める可能性があります。
マクロライド系抗生剤も代謝に影響を及ぼすため、シクロスポリン服用中は飲んではいけません。(エリスロシン®、クラリア®、クラリシッド®、ジスロマック®など。)ネフローゼ症候群以外の病気で受診をする際は、シクロスポリンを飲んでいていることを伝えてください。
シクロスポリン服用中に食べても問題ないもの
  • みかん
  • りんご
  • オレンジ
  • ボンタン
  • パイナップル
  • レモン

生ワクチンを接種すことも禁止されています。小児ネフローゼ症候群の場合、予防接種を受けることもあると思いますので、主治医の先生に相談してください。

シクロスポリンの副作用

シクロスポリンにも副作用があります。

副作用の中に慢性腎毒症があり、2年以上継続して服用するとそのリスクが高くなります。シクロスポリンの慢性腎毒症は尿検査や血液検査ではわからないため、シクロスポリンを開始する前と2年後に腎生検をおこなう必要があります。

また、シクロスポリンの副作用には多毛(毛が濃くなる)や歯肉腫脹(歯茎が腫れる)など外見的、美容的な副作用があることも特徴的です。

その他、以下の副作用があります。

  • 高血圧
  • 頭痛
  • 発疹
  • 貧血
  • 白血球減少
  • 消化器潰瘍
  • 悪心・嘔吐
  • 腹痛
  • 胃部不快感
  • 食欲不振
  • 下痢
  • 腹部膨満感
  • 末梢神経障害
  • 異常感覚
  • 振戦
  • しびれ
  • めまい
  • 糖尿病・高血糖
  • 高カルシウム血症
  • 高尿酸血症
  • 高脂血症
  • 高マグネシウム血症
  • 体液貯留
  • 耳鳴
  • 視力障害
  • 難聴
  • 筋痙攣
  • ミオパチー
  • 筋痛
  • 筋脱力
  • 関節痛
  • 月経障害
  • 眠気
  • 出血傾向(鼻出血・皮下出血・消化管出血・血尿)
  • 発熱・熱感
  • 倦怠感
  • 浮腫
  • 体重増加
  • のぼせ
  • 女性化乳房
  • など
シクロスポリンの重大な副作用
  • 肝障害
  • 中枢神経障害
  • 感染症
  • 急性膵炎
  • 血栓性微小血管障害
  • 溶血性貧血・血小板減少
  • 横紋筋融解症
  • リンパ腫・リンパ増殖性疾患・悪性腫瘍
頻度の低い副作用もありますが、中には命の危険を伴うものもあります。

ネオーラル

以前使われていたのはサンデュミンですが、この薬は体への吸収にばらつきがあるため、新しく開発されたネオーラルが使われるようになりました。ネオーラルはサンデュミュンに比べ吸収が安定しています。

ネオーラルは液体の薬で、瓶に入っているものを注射器のような器具で吸い上げて規定量飲みます。

まとめ

  • ネフローゼ症候群ではステロイド薬の副作用を避けるため、免疫抑制薬をしようする
  • シクロスポリンは頻回再発型・ステロイド依存性ネフローゼ症候群にも有効な薬
  • シクロスポリンの服用にあたっては注意すべき点がある
  • シクロスポリンにも副作用がある。中でも腎障害のリスクがあるため腎生検をおこなう必要がある

私の長男は頻回再発型・ステロイド依存性ネフローゼ症候群です。現在、ネオーラルを服用しています。

ステロイド薬のプレドニゾロンも服用していましたが、こちらは非常に苦い薬です。まだ錠剤が飲めない頃は、錠剤を砕いて粉にしてもらってアイスと混ぜて飲んでいました。アイスに混ぜても苦さがわかるくらいで、大人でも顔をしかめる程です。ネオーラルはプレドニゾロンに比べれば苦味は少ないようですが、独特の匂いと味があって、飲みにくいのは確かです。

そんな薬を毎日飲み続けている長男は本当に偉いと思います。また、忘れずに飲ませている妻にも感謝です。

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