ネフローゼ症候群|浮腫(むくみ)のメカニズム 浸透圧を理解する

ネフローゼ症候群の症状に浮腫(むくみ)があります。ここでは、浮腫のメカニズムを理解するために知っておいてほしい浸透圧についてお伝えしています。

浸透圧・血漿膠質浸透圧

中学や高校の生物で習った方もいると思いますが、浸透圧について勉強していきます。

濃度の違う液体を横並びにしたとき、間に遮るものがなければ、液体は濃度が均一になるように混ざり合います(拡散)。ここで、液体の間に半透膜を入れるとどうなるでしょう?

半透膜
溶媒である水やサイズの小さい分子は通すが、溶けている溶質やサイズが大きい分子は通さない膜のこと。半透膜には、ある一部のものしか通さない性質、半透性があります。
溶質も溶媒もすべて通す膜は全透膜といいます。例えば、植物の細胞壁は全透膜です。

半透膜が間にあるので、均一になりたい液体は、水だけが濃度の薄い方から濃い方に流れていきます。溶質は通れないので、水だけが移動します。この現象を浸透といい、浸透していく力を浸透圧といいます。

身近な浸透圧
日常生活で見られる浸透圧の例として、漬物があります。漬物は野菜の周りに塩があるので、水が野菜の内側から外側に出ていきます。また、ナメクジに塩をかけると小さくなるのも浸透圧によるものです。

体の細胞でも浸透圧がはたらいている

私たちの体は細胞からできていますが、細胞と細胞の間でも浸透圧がはたらいています。細胞を仕切っている細胞膜は半透性がある半透膜です。細胞膜には孔(チャネル)があいていて、水や電解質を移動したり(受動輸送)、エネルギーを使ってナトリウムやカリウムを移動したりしています(能動輸送)。

血漿膠質浸透圧(けっしょうこうしつしんとうあつ)

ネフローゼ症候群で起きる浮腫(むくみ)には血漿膠質浸透圧が関係しています。血漿膠質浸透圧、「けっしょうこうしつしんとうあつ」と読みます。

血液は細胞成分の赤血球、白血球、血小板と液体成分の血漿に分けられます。血漿にはたくさんの種類の蛋白質が含まれていますが、その中で一番多いのがアルブミンです。

アルブミン
肝臓でつくられる蛋白質で、血管内の水分保持、物質の輸送のはたらきがあります。

心臓から送られた血液は、動脈側では血圧によって、毛細血管の孔から間質を通して栄養分や酸素を細胞に受け渡します。細胞は老廃物や二酸化炭素を間質から静脈側の毛細血管に戻します。間質は細胞と細胞、血管と細胞の間にある空間で組織液(間質液)で満たされています。

血液と細胞は間質を介して物質のやり取りをしていますが、血液中のアルブミンはサイズが大きい分子のため、毛細血管壁の孔を通ることができません。血管壁が半透膜の役割をしていると考えると、血管側と間質側とにアルブミンの濃度差が生まれます。そのため、アルブミン濃度が低い間質の水が濃度の高い血管内に入ってきます。この浸透圧を血漿膠質浸透圧といいます。血漿膠質浸透圧はどこの血管でも一定にはたらいていますが、動脈側では血圧の方が力が大きいので水が血管内から間質に移動します。静脈側では血圧よりも血漿膠質浸透圧の方が大きくなるため間質から血管内に水が移動します。

毛細血管での水の移動
  • 毛細血管の壁には小さな孔があいていて、間質を隔てて細胞と物質のやり取りをおこないます。
  • 動脈側の毛細血管:血圧>血漿膠質浸透圧、血管内→間質へと水が移動します。
  • 静脈側の毛細血管:血圧<血漿膠質浸透圧、間質→血管内へと水が移動します。

ネフローゼ症候群では血漿膠質浸透圧が低下し浮腫が起きる

ネフローゼ症候群になると、大量の尿蛋白質がでます。これは糸球体のスリット膜という構造物が壊れて、蛋白質が血液から漉し出されているからです。本来は、蛋白質はサイズが大きいため糸球体で濾過されることはありません。

血液から蛋白質がなくなる、つまりアルブミンが減ってしまうと、血漿膠質浸透圧が低下したり、はたらかなくなったりします。そのため、静脈側の毛細血管で起きていた間質から血管内への水の移動ができなくなります。移動できない水は間質に溜まり、浮腫(むくみ)となります。

まとめ

  • 浸透圧は半透膜を隔てて、濃度の低い液体から濃度の高い液体側へと水が移動する力のこと。
  • 血管では間質との間で、アルブミン濃度差による血漿膠質浸透圧がはたらいている。
  • ネフローゼ症候群では、血液中のアルブミンが尿と一緒に体外に排出されてしまうため血漿膠質浸透圧が低下する。その結果、間質から血管内への水の移動が制限され、間質に水が溜まり浮腫となる。

浸透圧について理解していただけましたか?ネフローゼ症候群の浮腫には、尿細管での水、ナトリウムの再吸収の亢進も関係していますが、それはまた次の機会にお伝えしていこうと思います。

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